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カリモク60のあるところ

新海 康介 城町アネックス 代表(福井県在住)

インテリアとの親和性と実用性に満ちた包容力

Kチェア1シーター(ミストグレー)が配されたロビー。旅人を迎え入れるほか、読書スペースにもなる。

2024年3月に延伸した北陸新幹線「かがやき」で、東京から約3時間の距離にある福井駅。歩いて10分もすると、福井城跡の堅牢な堀に囲まれた福井県庁が現れる。この堀端で、1984年から多くの来訪客を迎え入れているのがホテル「城町アネックス」だ。

三角屋根に赤レンガづくりの佇まいは堀沿いの風景にしっくりと馴染む。旅人を迎え入れ、宿泊客が読書を楽しめるロビーには、カリモク60 Kチェア1シーターが配され、ガラスレンガ越しのやわらかな光が空間を包んでいた。ご両親の代から2008年に、このホテルの運営を引き継いだという新海康介さん・樹味さん夫婦。ロビーの奥は自宅になっていて、家族で来訪を迎え入れてくれるような温かみがあるプチホテルだ。

タープブルーのKチェア 1シーターとオットマン、そしてサイドテーブル。コンパクトでありつつ客室の設えに馴染む。

ふたりが「カリモク60」と出会ったのは、2002年、大阪でのこと。D&DEPARTMENT OSAKAで初めて見たその姿に「ドキッとした」のだそう。可愛らしさがありつつ、どこか懐かしさも持つ佇まいに心を掴まれ、家業を継ぐ前のサラリーマン時代だったが「絶対にうちのホテルに合う」と確信したのだそう。ふたりがホテルを引き継ぐことになり、2015年には竣工当時から大切に使われてきた家具を生かしつつ設えを変更。その際、ダブルとツインの客室に、カリモク60のKチェアとサイドテーブルを導入した。修理や手入れをしながら大切にしてきた家具や部屋のインテリアとの親和性ももちろんだが、なによりサイズ感が良いと、新海さんは話す。

2008年にホテルをご両親から引き継いだ新海さん。

「ホテル客室の家具って、リラクゼーションを重視するために比較的サイズも大きく、重厚感のあるものが採用されることも多いのですが、Kチェアは、ゆったり座れる包容力がありながら、コンパクトで移動も楽。何より日々の清掃が大切な客室では、Kチェアとテーブル、オットマンを重ねることで、床の隅々まで掃除ができるのが魅力です」。

来訪客を迎え入れて約10年。使うたびに艶を増す木製のアームや、くたびれない座面。経年変化の美しさと実用性がある。

加えてメンテナンス性にも優れていることも大きな魅力だという。

「アンティークも好きなのですが、ホテルの場合、画一性のある客室にしようと思うと揃えるのが難しい。生産が終了しているとパーツを取り寄せることもできず、修理が難しいですよね。その点、カリモク60は日々の手入れだけでも美しさを保てるし、パーツの交換や修理にも対応してもらえる安心感があります。今の所はまだ大きな修理をするほどに至ってなく、思っていた以上に座面や背もたれの弾力も保たれています」。

時折ネジを締めて緩みを直すほか、日々の手入れは、粘着テープでゴミを取り、木の部分をさっと乾拭きするだけ。客室に導入されてから10年弱。シートには毛羽立ちも見受けられず、木製のアームは美しい艶を放っていた。

東側の部屋には、スタッキングスツールを。背もたれがなく、窓からの景色を邪魔しないコンパクトさが魅力。

座り心地の良さ、手頃なサイズ感、インテリアに馴染む雰囲気に惹かれ「実は自宅にも4つKチェアがあるんです」と新海さん。「座り心地が良いのに、さっと立ち上がれるというか。怠惰になり過ぎない良さがありますね(笑)。オットマンに足を乗せてちょっと仮眠をとるのにも適しているし、テレワークもできる。長時間読書をしても疲れない、使い勝手への懐の広さがあります」。

竣工時から壁に配されたロゴ。「職人泣かせだったという話を聞きますが、昭和のものづくりの素晴らしさを感じます」。(新海さん)

全ての客室の壁に埋め込まれたホテルの外観を象徴する木製のロゴ。Kチェアに座って読書を楽しみながら、時折眺める大きな窓からの景色も美しい。竣工から40年経った今、当時の家具を活かした部屋に、カリモク60がまるで昔からそこにあったかのように馴染んでいた。

福井城跡の堀沿いに佇む「城町アネックス」。知多半島の「国代耐火工業所」製の赤レンガで、敢えて焼きむらがあるものを使った。
DATA
城町アネックス
福井県福井市大手2-18-1
1泊素泊まり1名 8,000円〜
新海 康介Kosuke Shinkai

福井県福井市在住。
ホテル「城町アネックス」代表。

Text:
Noriko Matsuzaki
Photo:
Yuta Hinohara