ナガオカケンメイ
D&DEPARTMENT PROJECT創設者

ナガオカケンメイ
D&DEPARTMENT PROJECT創設者
JR富山駅から富山城方面へ向かう城址大通りを歩くこと約10分。富山県の文化振興の拠点としてホールやギャラリー、美術館を備えた「富山県民会館」が見えてくる。この場所の1階にあるのが、2025年3月でオープンから10周年を迎えた「D&DEPARTMENT TOYAMA」だ。店内には、富山県内の息の長いデザインを掘り起こし紹介するショップスペースとギャラリー、そして地元食材を使うダイニング「D&DEPARTMENT DINING TOYAMA」がある。
ダイニングには、圧倒されるほどの数のカリモク60 ロビーチェアがずらり。10年前のオープン当初から変わらず使い続けているロビーチェアが、大きな窓からの光を受け、艶やかな輝きを見せている。
「この場所には、もともと喫茶店があったんです。県民会館で開催される音楽コンサートや、絵や習字、お花の展示会とか……、色んな文化的なイベントに訪れた後、ふらりと立ち寄ってお茶を飲むような場所で、若い方から高齢の方など、幅広い世代の方々が訪れる割と華やかな喫茶店でした。そんな趣を継承しつつ、居心地の良いサロン的な場所を作りたいと思いました」と、オープン当初のことを振り返る、D&DEPARTMENT PROJECT創設者のナガオカケンメイさん。
ホテルのラウンジのようなゆとりのある空間でありつつ、県民会館で開催されるホールでのコンサートや、大規模な展示会などの後に訪れる方々を受け止められるには、ある程度の席数も確保する必要がある。そんなニーズに応える椅子として採用されたのが、カリモク60のロビーチェアだった。壁面に沿ったスペースにはロビーチェア3シーターが配置され、コンパクトながらも、大人3名をゆったりと受け止める。席数を重ねても空間がスッキリと見えるのは、ロビーチェアのシンプルなデザインに所以するのだろう。
居心地の良さを実感できるもう一つの理由について「肘を置けるようなスペースがあると、居心地の良さを感じられると思うんですよね。何となく自分のスペースにものが置けるというか。何か物を置ける場所があるというだけで、心にもゆとりの気持ちが生まれるような気がします。飛行機のシートに肘掛けがある場合でも同じような気持ちになりますよね」とナガオカさん。ロビーチェアの肘掛けの幅は10センチほど。2つのシートを並べると、その倍の約20センチが確保されるため、さらに隣に座った人と程よい距離感が保てる。
大きな白い壁面には、はっとりさちえさんによる躍動感あふれる絵画。ロビーチェアの黒と白いテーブルで統一された空間に彩りを添えている。「夜、暗くなって外から店内を見ると、ライトに照らされたこの絵がこの店のキービジュアルのようになっているのも美しいです」とナガオカさん。1968年から販売されているロビーチェアを採用し、クラシカルな印象を残しつつも、どこか新しく、今を感じさせる佇まいを感じられる。
さらに、座面に対する背もたれの角度が傾き過ぎていないことも、この椅子を選んだポイントの一つだとナガオカさん。「横から見た姿が本当に美しくて。ロビーチェアは元々、中小企業の応接間用の椅子としてデザインされたものなので、傾斜がつき過ぎない程よい角度なんです。少し前傾姿勢になることで、目の前にいる人との会話も弾むような、バランスのいい椅子です」。
D&DEPARTMENT TOYAMAでは、定期的にトークイベントなどが開催されるため、参加者が一定方向を向いて話が聞けるようにカフェ内のレイアウトを変更する機会も多い。その都度レイアウト変更をするのは大変そうだが、プライベートスペースを保ちながら、時に前傾姿勢になったり、時に背もたれに身を委ねたりしながら話を聴けるのは、参加者にとっても心地よいひと時だと想像できる。
日々のお手入れは、柔らかい布で丁寧に乾拭きするほか、座面クッションを上げてゴミを取り除く程度。週に1度は硬く絞った雑巾で水拭きを行なうことで、10年経っても美しい輝きを保っている。お気に入りの場所でコーヒーを飲みながら、その居心地の良さをぜひ体感してほしい。