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COLUMN

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SHOPS

カリモク60を販売する個性豊かな仲間

キム・ハクゴン REMOD 店主

時を重ねて、暮らしに馴染む。
韓国・江南で
「ロングライフデザイン」を繋ぐ

韓国・ソウルの中心部、江南(カンナム)エリア。大通りの賑やかな喧騒から少し離れた落ち着いた街並みの中に、静かに佇むインテリアショップ「REMOD(リモド)」がある。
2010年の開業以来、一貫してカリモク製品を主軸に据えた店づくりを続け、2026年で16年目を迎えた。

地下1階から地上5階までの各フロアには、「カリモク60」をはじめ、伝統的な様式美を取り入れた「domani(ドマーニ)」、現代の建築的アプローチを具現化した「KARIMOKU CASE(カリモクケース)」など、カリモクが持つ多様な世界観がフロアごとに美しく表現されている。

この店を率いるオーナーのキムさんと、カリモク60との出会いは約20年前に遡る。当時、インテリアとは無関係の会社員だったキムさんは、友人の家具店にさりげなく置かれていた1脚の「Kチェア」に目を奪われた。 「自分の体にぴったりと合わせたボタンスーツを小粋に着こなした、小さな紳士のようでした」と、キムさんはその感動を振り返る。

当時の韓国は、1990年代後半から急速にマンションが普及し、人々のライフスタイルが激変していた時期であった。市場の主流は西洋のモダンデザインや北欧インテリアなどで、ヨーロッパ産の豪華な大型家具が好まれる傾向にあった。しかし、これらは時に小柄なアジア人にとっては大きすぎ、日本の住宅事情とよく似た韓国の生活空間には馴染まない側面もあったという。

カリモク家具 新横浜ショールームにてKチェアとの出会いを話すREMODオーナーのキムさん

「豪華さで見せる家具ではなく、自分の身体にぴったりと合う快適性や、長く使える家具の価値を伝えたい。コンパクトで身体にフィットするカリモク60の魅力は、これからの韓国の暮らしに必要な豊かさをもたらすはず」。
結婚や引っ越しのタイミングで使い捨てのように家具が買い替えられる当時の消費文化に静かに一石を投じるべく、キムさんは2010年秋、現在のビルの1フロアからREMODをスタートさせた。

とはいえ、オープン当初の韓国における「カリモク家具」の認知度は皆無に等しかった。 そこで「まずは知ってもらうことが大切」と、金さんは雑誌社やテレビ局にアプローチを重ね、ドラマ撮影での家具無償貸出や雑誌広告出稿などに注力した。オープンから5年間、地道にメディアに露出し続けることで「カリモク60」を知る人は次第に増えていった。やがてその魅力が著名人にも伝わって愛用されるようになると、SNSなどでの拡散も手伝い、店舗にはさらに多くの人が足を運ぶようになっていった。

REMODの3Fは「カリモク60」の展示スペース。

しかし、REMODが多くの支持を集める理由は、華やかな宣伝活動以上に、その誠実な接客にある。 高い販売実績を築いてきたキムさんと聞き、取材前は少し身構えていた。しかし、「実は、こうして自分自身が取材を受けるのは初めてなんです」とはにかむ姿からは、場を和ませるような穏やかさが感じられた。

長年にわたりカリモク家具の魅力を発信してきたキムさんにとって、最も思い入れがあるのは、やはり出会いのきっかけとなった「Kチェア」だ。「背もたれに身体を預けるとやさしく包み込んでくれる座り心地、そして職人の手仕事を感じる木部の仕上げ。クラシックなキルティングや小さなボタンのディテールに加え、使うほどに満足感が深まっていく愛着感も、Kチェアの一番の魅力です」と熱を込める。

ダイニングチェアやKチェアの構造を見せることで、一生ものとして使い続けられる魅力を紹介

単なる消耗品ではなく、傷めばパーツを交換し、手直ししながら「一生もの」として使い続けられる、実直なものづくり。キムさん自身も日本の工場へ足を運び、徹底した職人の手仕事とシステム化された品質管理を目の当たりにして、その品質への確信を深めた。 「家具は決して安いものではない。だからこそ、素材や製造工程へのこだわり、そして長く使い続けてもらうためのメーカーの工夫を知ることで、自信と誇りを持って『この価格に見合った製品です』とお客様にお勧めできるようになった」と話す。

そうしたものづくりの工夫を伝えるために、スタッフと共に店舗のレイアウトを何度も変更し、試行錯誤を重ねながら、お客様がより心地よく商品を見られる配置を探ってきた。

店内でお客様が自由に椅子を移動し組み合わせなどをイメージできる空間になるよう何度も検証を重ねる

リビングやダイニングといった暮らしのシーンを想像できるルームセットの提案はもちろん、フロア中央には、テーブルと椅子の組み合わせを自由に組み替えながら検討できるエリアが広がる。商品紹介のパンフレットやPR用のポップ、華美な装飾などもなるべく配置しないことで、お客様が家具本来の美しさに集中し、テーブルや椅子を実際に動かしながら組み合わせの相性を確かめることができる。 単に商品を見せるのではなく、人や空間、暮らしの中で自然に存在する家具として伝えることを大切にしているからだ。

体格の変化やゆったりとした寛ぎを求める声に応えて登場した「Kチェアワイド」(右)

こちらは「Kチェア」の標準サイズとワイドサイズ。「Kチェアワイド」は、シート幅が標準より9cm広く設計されているが、座面のスプリングに使用するS字バネの本数を増やして、適正な強度と沈み込みを保ち、身体をしっかりと受け止めることができる。
そうしたものづくりの工夫を、実際の座り心地を体験することで直接比較できる。

そして、お客様が自由に店内を回遊している間、キムさんやスタッフは、少し離れた場所から静かに見守る。お客様が椅子に深く腰掛け、じっくりと使い心地を確かめ始めた頃合いを見て、初めて寄り添うように声をかけることで、程よい距離感と信頼関係を築くよう心掛けている。
また、張り地のサンプルが一つひとつ実際の座面に張った状態で並べられているので、木製フレームと組み合わせることで、実際の印象を直感的に思い描けるのも嬉しい。

カラー違いの座面を差し替えるだけで、張り地による印象の違いを直感的に認識できる

日本では、スタンダードブラックやモケットグリーンが人気の張り地だが、REMODではタープグリーンやメリットサンフラワーが人気だという。国によって張り地の好みに変化があるのも興味深い。

右は日本で人気のモケットグリーン。それに対して左はもう少し明るみのあるタープグリーン

可能であればお客様の部屋の写真を見せてもらい、手持ちの家具とのバランスをプロの視点で見る。もし今のインテリアのままで十分に美しく、買い足す必要がなさそうであれば、無理に販売を勧めることはしない。

「お客様との関係で大切なのは、決して売り込みすぎないこと。商品のスペックを先に伝えてしまいがちだが、まずはお客様がどんな部屋で、どんな目的で家具を必要としているかを丁寧にヒアリングすることが最優先です」。

短期的な売上を優先するのではなく、お客様の暮らしに本当に必要なものだけを提案する。その誠実な姿勢こそが、REMODとお客様との揺るぎない信頼関係の礎となっている。

例えば、東日本大震災の後、韓国国内で日本製品の安全性に対する不安が広がった際、店頭に放射線測定器を設置した。入荷するすべての家具をお客様の目の前で測定し、「安心」を数値として可視化することで不安に寄り添った。

また、生産終了予定のソファ部品があることを知った際には、愛用者がこれからも同じ家具を安心して使い続けられるようにと、可能な限りのパーツ在庫を自店で買い取り、責任を持って必要とするお客様のもとへ届けたことも。

Kチェア60周年特別記念モデル(上段:神戸モデル・中段右:岡山モデル)も、ブランドの取り組みや価値観を伝えるものとして展示。※現在は販売終了。詳細はこちら

「長期的にお客様と良好な関係を続けるため、相手を想い、実直であることを大切にしています。それは、長く使い続けるというロングライフデザインの考え方に通じるものです」。

こうした誠実さの積み重ねこそが揺るぎない信頼を築き上げ、REMODは「カリモク60」リテーラー部門において、2025年度販売実績1位という快挙を成し遂げた。

オープンから16年目を迎えた今、REMODには新たな喜びの循環が生まれている。かつて新婚の頃に幼い子どもを連れて訪れ、お気に入りの家具を買い揃えたお客様が、子どもの成長や独立を機に再び店舗を訪れ、家具を買い足すケースが増えてきたという。

「私たちが目指すのは、親から子、そして孫へと三世代にわたって愛用される家具を提供し、気軽に立ち寄っていただけるお店です」。

そう話すキムさんの眼差しの先には、流行に左右されない「ロングライフデザイン」の灯。それはこれからも変わることなく、優しく、力強く輝き続けるに違いない。

DATA
REMOD(リモド)
ソウル特別市 江南区 奉恩寺路68キル5
平日 11:00〜20:00、土・日・祝 11:00〜18:00
キム・ハクゴンKim Hak Geon

REMOD 店主。

Text:
Noriko Matsuzaki
Photo:
Lee Hyuckshin、Yuta Hinohara