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COLUMN

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DIALOGUE

カリモクと居心地

“普通”の居心地をもつ病院

 

“普通”の居心地をもつ病院

私は兵庫県明石市にある「ふくやま病院」の理事長を務めています。

開業して40年以上たち建物の老朽化もあって、2016年に移転オープンしたのがこの病院です。院内に、コミュニティデザイナー・山崎亮さんの協力をいただき、地域の方に使っていただける「コミュニティホール」を作りました。イベント・展示・ワークショップ・会議などに無料で利用でき、定員は最大約50名。一般的に病院はなるべく来ないほうがよい所かもしれませんが、体調が悪化してから来るのではなく、日頃から趣味やボランティア活動、それこそ散歩の途中に気軽に立ち寄り、血圧を測ったり、トイレを使ってもらったり。敷居が低く、何でも相談される病院でありたいんです。先日も屋上庭園で、園芸療法を兼ねて患者さんと、保育園の子供たちが芋掘りをしたんです。たくさん採れて、にぎやかでしたよ。

自分が本好き、ということもあり、1階に、幅10m、高さ約2.5mの図書コーナーを作りました。どこにも行けなくても、1冊の本があれば、ちょっとした待ち時間に自分の世界を持ち込んで、頭を自由にできる。DVDやテレビも考えましたが、いろいろな年代の方が来る病院には本がよいかなと思いました。

1階の待合スペースは、オープンカフェのように全面開放できるんです。外に桜が植えられる予定なので、特に春はよい感じだと思います。実はこの窓について、院内の反発が大きかった。全開にできる日は少ない、虫や音の害は、など。でも開けられるようになっていることが大事だと思いました。冬でも小春日和のような暖かい時間帯がある。そんな時、開けたら気持ちよいだろうし。病院は、待ち時間や医師からの話が辛いこともあります。そんな場所を少しでも変えたいなと思ったんです。

僕はアイデアは出すのですが、実施できたものは少なくて、だいたい2勝8敗くらい。スタッフから安全性や運用効率を指摘され、ほとんどボツ(笑)。諦めそうになりましたが、数少ない「勝ち」が、1階の窓とカリモク60の導入でした。衛生面や耐久性を検討し、座面が低めの「Kチェア」は高齢の患者さんが立ち上がりにくいのでは、という意見もあったので、「Kチェア」に加えて、座面が高い「ダイニングチェア」も導入。張り地はスタンダードブラックがメインですが、明るい雰囲気も欲しいのでコミュニティホール前にはアイボリーを、病室内にはキャメルの「スリーピングソファ」も使っています。

今度、北九州に別の医療法人の病院ができるのですが、建て替えにあたり、「ふくやま病院」がモデルと聞き、嬉しいなあと思いました。この規模の病院なら、ここが一つの事例だね、と言われるような「病院のプロトタイプ」でありたいです。自分たちが上手くいかなかったところも、なるべくオープンにして、それによって、次に建つ病院がより良くなって、だんだんと全国の病院の環境が変わってくれば、と思います。日本の病院の民度があがるといいなと考えています。

譜久山 剛Tsuyoshi Fukuyama

ふくやま病院 理事長

1970年生まれ。1999年より譜久山病院(現「ふくやま病院」)勤務。2004年より院長、2017年より理事長。

Text:
Naoko Tanabe
Illustration:
Yota Miyashiro
Photo:
Shintaro Yamanaka