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DIALOGUE

カリモクのこころみ

価値を伝える人を育てる

 

価値を伝える人を育てる

カリモク60では、2016年から販売店の方々に向けて、

「カリモク60マイスター」という資格制度をスタートさせました。カリモクではすでにカリモク家具販売店を対象としたマイスター制度があります。誤解されやすいのですが、カリモクでは基本的に小売りはしていません。パートナーシップを結んだ販売店が商品を売る仕組みになっています。製造者が直接売るわけではないうえに、家具には見た目ではわからないこだわりの部分がたくさんあります。そこで取扱店の方々に商品知識をしっかりと持ってもらうために制度を立ち上げ、いまでは全国に700人以上のマイスターがいます。

2つの制度の大きな違いは、カリモク60がブランドだということ。商品知識もさることながら、「ロングライフデザイン」というコンセプトをしっかり理解したうえで、それをお客さんにきちんと伝えられないといけない。ものの価値より前にブランドの価値を伝えることができる人が必要だと思っています。

また、60マイスターには組み立ての実務試験もあります。カリモク60販売店は配送機能を持っていないところが多く、お客さんが組み立てることがよくあります。そのとき、わからないことがあると、まず問い合わせるのは買ったお店です。でも実際に組み立てた経験がないと、うまくコツをお伝えできません。それで本社が対応することもありますが、本来ならば知っている販売店スタッフに相談できたほうがお客さんは安心ですよね。

販売店の役割は、カリモク60の世界観をリアルにショップで展開して、その魅力を地域のお客様にアピールしてもらうこと。カリモク60はどこでも扱える商品ではありません。取扱店は全国に約100店舗ありますが、これ以上大きく増やすつもりはありません。現状、オファーの大半をお断りしている状況です。ですから販売員の方々には、誰でも売れるものではない商品を売っているというプライドを持ってもらいたいのです。

振り返れば2000年に、ナガオカケンメイさんと本社の人間が初めて会う場に偶然居合わせこともあり、立ち上げ当初からカリモク60に携わってきました。この間、カリモク本体は知らないけれどカリモク60を知っている人がいるようになったことは大きな変化です。一方で、長く続くと売り場では「売り飽きる」現象が必ず起きます。そこで新しい商品を次々投入していけば新鮮さを維持できるかもしれませんが、それはカリモク60のコンセプトに反します。となると、売る人が飽きずにしっかりその魅力を伝えていこうという気持ちが大切になってきます。

2002年に誕生したカリモク60は、人間でいうと、身体は大人に近づいてきても、中身はまだまだ子どもです。ここからまたいろんな経験を積み、内面的に成長しなければいけません。このブランドを長く使い続けてくれる人のために、その価値を十分理解し、伝えていけるプロフェッショナルを育てる。カリモク60マイスターはそのための取り組みなのです。

小島 敏彦Toshihiko Kojima

1986年カリモク家具販売(現カリモク家具)入社。営業・人事などを経て、カリモク60の立ち上げに参加。カリモク60 ブランドマネージャー(〜2017年)。

Text:
Yuko Shibukawa
Illustration:
Yota Miyashiro
Photo:
Shintaro Yamanaka