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わたしの空間のカリモク

坂口 琴美 ホテル ヌプカ 総支配人(北海道在住)

時の流れを感じるロビー

東京暮らしの坂口琴美さんに舞い込んだ、故郷・帯広でのホテルのリノベーション。宿の顔に選んだのは本革のヴォルテライトブラウン。使い込むほど風合いが増す革のように、訪れる人との関係をじっくり育んでいけたらという思いがある。

街の風景になっていた緑色のタイル張りの外観は生かしつつ、施設内はフルリノベーション。
レンタルサイクルのサービスも。見た目も乗り心地も評判の「tokyobike」の自転車を用意。
毎日使うから、便利なものより、愛着が湧くものを選びたかったんです。

アイヌ語で「原野」を意味するホテルヌプカは、2016年3月に開業したリノベーションホテルだ。総支配人の坂口琴美さんはもともと東京で飲食店を開いていた。「宿は究極のサービスだから、いつかやりたかった」という坂口さんのもとに、同郷の先輩から「廃業するホテルを買ったから、帯広で宿をやらない?」と誘いがかかったのは2014年。そこから手探りで準備が進んでいった。

坂口さんがとりわけこだわったのは、ロビーとレセプション、カフェがあり、人が集う1階のフロア。まず目に留まるのは薪ストーブ。そのまわりを本革のヴォルテライトブラウンの2シーターと1シーターが取り囲む。「合皮には合皮らしい軽やかさがありますが、できれば大事にしたくなる素材を選びたくて」と坂口さん。新品のときは淡い色合いだった革だが、あっという間に渋くツヤが出てきた。「愛着のあるものほど、直して長く使おうという気になりますよね。そう思ってくれるスタッフと一緒に、帯広の街に人が戻ってくるようになるまで10年、20年かけて続けていきたいんです」。使うものから伝えられるものはたくさんある。そう語る坂口さんは、「Kチェア」に腰掛けながら愛おしそうに座面をなでた。

テーブルは、樹齢250~300年のミズナラの銘木。仮オープンの際に借り、どうしてもほしくて購入。「Kチェア」ヴォルテの木肘にもナラ材が使われていると知り、選ぶ決め手に。
坂口 琴美Kotomi Sakaguchi

ホテル ヌプカ 総支配人(北海道在住)

Text:
Yuko Shibukawa
Photo:
Shintaro Yamanaka, Shunsuke Itou