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COLUMN

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DIALOGUE

カリモクと時代

日常で出会える「正しさ」

 

日常で出会える「正しさ」

私は韓国で、MILLIMETER MILLIGRAM(以下、MMMG)という、小さなデザイン会社の共同代表を務めています。

文房具や生活用品をデザインし、製造、自分たちで店舗を運営しながら販売をしています。カリモク60を初めて見たのは、2002年に東京のD&DEPARTMENTを訪問したとき。このとき、長い間、家具を作り続けてきた、カリモク家具という会社のことを知りました。

個人的にもカリモク60が好きになり、韓国で販売が始まる前から、買って使っていました。その後、2010年にソウル訪問中のナガオカケンメイさんと出会ったことがきっかけで、MMMG cafe & storeの中に、カリモク60のショールームをつくることになったのです。製品一式が到着した日、スタッフ全員でわくわくしながら開梱、ショールームを作り上げたことは7年たった今でも鮮明に覚えています。ショールームは、実際に座ってもらえるように構成し、お客さんが自然にカリモク60を体感してもらえる環境にしました。ここでは、長時間、座って話をしたり、読書をしたり、お茶を飲んだりして過ごせます。使い心地の良さを感じられた方々から、徐々に購買につながっています。

2013年9月には、「カリモク60ミーティングinソウル」を開催し、約250人のお客様にお集まりいただきました。当日は、ブランドマネージャーの小島敏彦さんとナガオカケンメイさんのトークをはじめ、「オットマン」のシートをかたどったケーキでおもてなしし、楽しく賑やかに会場内が盛り上がりました。実は韓国も、日本の状況と似ていて、早いテンポで環境が変わります。続けていくことよりも、新しく作られるものに関心が集まりやすい。 だからこそカリモク60のように、今後も持続できるように、変えないところと変えるところのバランスをとることは大切です。このイベントに参加してくださった多くの方々は、日本やカリモク60の事例を通じて、今この時代に必要な大切な考え方を見つけたい、ということだったと私は思っています。

社名のミリメーター ミリグラムに込めたように、もともと私たちは、小さな違いを大切にしながらものを作り、販売していましたが、カリモク60や、ロングライフデザイン商品の販売を通して、私たちにも変化がありました。正しい生産者の姿を見たことで、日常的なものを通して、生産者と倫理的な循環をつくることができる、という可能性を感じることができたのです。

私たちはものがあふれている、とても豊かな時代を生きています。 ありふれた安価なものが大量にショップに並び、誰かに買われるのを待っている。巨大なショッピングモールで供給される商品は、生産者がどのように作ったかなど、想像すらできません。 脈絡のない安価なものを見ると、生産者、流通業者、さらには消費者である私たちも皆、何もできずに打ちのめされてしまいます。そんな時代だからこそ、正しい生産者の気持ちが込められているものに、私たちが日常の中で出会うことで、何かがかわっていくのだと思います。

裵 秀烈Suyel Bae

MILLIMETER MILLIGRAM共同代表

1999年、3人の仲間とデザイン制作と製造販売を手がけるMILLIMETER MILLIGRAMを創業した。現在、同社の共同代表。D&DEPARTMENT ソウル店も運営。

Text:
Naoko Tanabe
Illustration:
Yota Miyashiro