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COLUMN

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TREE

木のはなし

「木と人の家具カリモク」の木についてお話しします。

森の中で考える
日本の木、林業、家具

日本の国土の7割近くを占める森林。豊富な資源がある一方で、人手不足や過間伐などの問題を抱える日本の林業。その未来を考えるべくカリモク家具・加藤正俊社長が、自伐型林業を推進する第一人者・中嶋健造さんを訪ね、高知県の山のなかを歩きながら語り合った。

対談の場所は、高知竜馬空港から車で、1時間半、高知県のほぼ中央にある佐川(さかわ)町の山林。斜面を登りながら、自伐型林業推進協会の代表理事・中嶋健造さん(左)と、カリモク家具の取締役社長の加藤正俊さんの対話が進む。
70年、80年と長く育てれば
1本の木の価値は上がる
加藤正俊
久しぶりに山に来ましたが、空気が澄んでいてとても気持ちいいですね。思った以上に薄暗く鬱蒼(うっそう)としていて、土が湿っている印象を受けました。
中嶋健三
ここは近くにお住まいの山崎尭敏さんが、奥さんのお祖父さんの代から受け継いだ山です。針葉樹の人工林で、樹齢30年ほど前まで手が入っていたんですが、それから20年以上、放置されていました。60年超えたいま、山崎さんが山守の坂本昭彦さんの助けを借りながら、自伐型林業を行っています。
加藤
自伐型林業は、持続可能な林業と聞いています。森林の持続可能性については、僕らもずっと考えていまして。弊社のカリモク60では、ラバートリーというゴムの木が持続可能な木材ということで、マレーシアで調達しています。ゴムの木は30年で樹脂の採取を終えて植え替えるので、その際に伐採された木を家具に利用すれば、環境にもやさしい。でも最近では、ゴムの木よりお金になるとパームヤシに転換する農園も出てきていて。そんなわけで日々持続可能性の難しさに向き合っているので、自伐型林業がどういうものか大変興味があります。
中嶋
自伐型林業とは、所有者や地域が木々を育てながら、山林の整備、伐倒、搬出までを行う自立、自営型の森林経営のことです。木の生長に合わせてこまめに間伐する「多間伐」を行い、長期にわたって大きく育てていくのが基本。徳島に素晴らしい山を育てている自伐林業家さんがおって、その方で3代目、いま息子が継いで4代目。それだけ経つと、スギの樹齢は平均80年くらい。1haあたりだいたい800㎥の木材に育っていて、100haあるから合計80,000㎥。スギは安く見積もったとして1㎥は1万2000円なので、彼の山にはざっと計算しても10億円近い価値があるわけです。そこから毎年全体の0.5%を得たとしても600万円。しかも木々は年々育っていくので、いわば在庫を増やしながら利子が入ってくる生活。これが森林経営です。
加藤
林業は儲からないとよく言われていますが、やり方次第では違うということですね。
中嶋
無理なく経営できるのは、価値のある木を育てているから。もともと日本の林業は自伐型だったんです。でも昭和20~30年代にかけて、みな伐り尽くしてしまった。昭和39年に木材の輸入が自由化され、昭和40年代以降、森林組合(*)や業者が施業を請け負う大規模化が始まった。大型の機械を森に入れて広い作業道を作り、列状間伐をする。列状間伐とは、山林を列で区切って、その列にある木々をいい悪いも選定せずに一気に伐採すること。これによって、山も林業も疲弊してしまったんです。
加藤
昭和30年代には、拡大造林も推進されましたよね。
中嶋
そうです、そのとき植えられたスギがちょうどいま50年を迎え、いっせいに伐採されています。俗に言う「50年皆伐」ですわ。でも樹齢50年そこそこのスギだと、B材(*)と言って集成材にしかならない。70年、80年と気長に育てていけば価値も上がり、1本の木から採れる木材の量も多くなる。だから小規模でも、永続的に経営していける。持続可能で、なおかつ環境保全にもなるというわけです。
加藤
自伐型林業を守ってきた地域はあるんですか。
中嶋
「吉野杉」で有名な奈良の吉野は、ずっと自伐型。だから樹齢200年、300年という世界有数の森が残っているんです。
加藤
自伐型の永続性は、歴史的にも実証されているんですね。
高知県の山奥、仁淀川町上名野川集落。限界集落だったが自伐型林業で約20人が林業で生計を立てている。半分はUターン、Iターン。
ベテラン自伐林業家が、持続的な森林経営や使い続けられる壊れない道づくりを現地で教えているところ。
樹齢90年の美しい杉林、1haあたり約1000㎥もあり、補助金なしで森林経営をしているベテラン自伐林業家の森。若手の目標。
急傾斜など作業道の敷設が難しいところで、軽架線による搬出研修を実施しているところ。シンプルな仕組みと小型機械がカギ。
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