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COLUMN

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TREE

木のはなし

「木と人の家具カリモク」の木についてお話しします。

広葉樹の森から考える、
昔と今の「よい木」

江戸時代から続く材木屋で、木工所としてスタートしたカリモクには、よい材料を使ってよいものを作るという理念がある。だが、よい材料とは何だろう。原点を追ううち、それはいつしか「よい木とは何か」という根本的な問いにつながっていった。

家具に使う、広葉樹の木材が
生まれるところ

紅葉も終わりを迎えた北海道の広葉樹林。歩くたびに落ち葉がカサカサと音を立て、地面に目を凝らしてみれば、そこかしこにドングリが転がっている。なかには白い芽が飛び出しているものもあるが、そのほとんどが根づくことはないという。仮に運よく成長できたとしても、家具に使える大きさに育つまでには100年、200年という気の遠くなるような時間がかかる。

私が歩いているのは、富良野にある三津橋産業の社有林の一画だ。北海道士別市に本社を構える三津橋産業は、カリモクがテレビキャビネットを作っていた頃から木材を供給してきた。1989年には、カリモクと合弁で大成産業を設立。現在、製材の大半を大成産業に供給し、カリモクの家具作りを陰で支える企業の一つだ。

「長年にわたって、これだけ北海道のナラを使っているメーカーは、カリモクさんのほかにいません」と語るのは、社長の三津橋央氏。だが「長年」で、森を取り巻く環境は大きく変化した。家具用材となる広葉樹は戦後に伐採が進み、著しく減少。厳しい状況が続くなか、どのように木材を確保しているのだろうか。

北海道北部の士別市は、約75%が森林だ。この地を拠点とする木材の総合メーカー、三津橋産業の「土場」では、多数の丸太が管理されている。

木材をどのように調達されているのでしょうか。

三津橋
森林は管理する主体によって国有林、道有林、社有林、民有林に分けられます。北海道は国有林、道有林が全体の7割近くを占め、こうした公的な森林から出る材は、公売で入札して取得します。
買うのはほとんどが枝を払って、既定の長さに切断した、いわゆる玉切りの状態の丸太ですね。落札したら、山土場(伐採した木の一時集積所)から運んでこなければなりません。

ある程度、まとまった量を落札するんですね。1本1本、吟味して買うのかと思っていました。

三津橋
1本ずつ値づけするのは、木目や材質がよいとされている木が集まる銘木市の場合ですね。旭川の銘木市は、夏場を除いてほぼ毎月開催され、全道、海外から広葉樹が集まってきます。2人1組で両木口(こぐち)から木の状態を見ます。

良質な木を見極めるポイントはあるのでしょうか。

三津橋
木口から見て、目が詰んでいるものは当然いいですし、芯に近いところの目が詰まっているほうが欠点が出にくいとか、いろいろあります。赤みが厚く、白太が薄い。形が真ん丸で、芯が真ん中に近いところにある。そうしたものが良材ですが、今はなかなかそれだけの条件が揃ったものは出ないですね。
伐採は、雪の降る冬場がシーズン。積もった雪で丸太の表面や山肌を傷めることなく、移動できる。
チェンソーを使う、伐採した原木を移動させるなどの一連の作業にはすべて、有資格者があたる。

かつては、そうした良質な木はけっこうありましたか。

三津橋
もともと士別市や旭川市、富良野市といったこの上川地区は、広葉樹の優良産地でした。優良なナラも相当出ましたが、その大半が戦後、インチ材といってインチ単位で製材され、ヨーロッパ向けに大量に輸出されたんです。
フランスなどに行くと、ナラでできた古い住宅の大きなドアや階段がありますが、そういうところに北海道から輸出されたナラが大量に使われています。

戦後、輸出によって資源が枯渇してしまったんですね。

三津橋
はい、過剰伐採が原因です。それでも私どもはずっと道産材にこだわってきましたが、道内の製材所の多くは、米材やヨーロッパ材、あるいは中国材やロシア材にシフトしていきました。
一時は中国材がけっこう入っていましたが、中国も資源が枯渇して、あとはロシア頼み。ですが、これもワシントン条約で簡単に輸入できなくなったうえに、価格も高騰しまして。これまでロシアから持ってきた原木を挽いていた製材所が、道産材を使い出したんです。ですが道産材も量がそれほどないものですから、原木の調達はますます厳しい状況に置かれています。

三津橋産業さんが道産材にこだわってきたのはなぜですか。

三津橋
海外の木を扱うこともありますが、基本的にはここ北海道でものを作りたいという気持ちがあります。そうすれば雇用も生まれますし。それに海外から丸太で運んで挽(ひ)くと、どうしてもコストが高くつきます。ならば現地の規格にしたがって、地元で製材されたものをうまく使いこなしたほうがいいと思ってますから。もともとうちは広葉樹の材を扱う工場が5つありましたが、いまでは1つに減りました。でも、この工場はずっと守っていきたいと思っています。
丸太から板材に加工。板材には、風通しをよくするため、必ず細い木材を間に入れる。